webデザインイメージ

ホームページのデザインを考えるとき、参考になるのは同業他社のサイトだけではありません。そのひとつがファッション誌です。写真、見出し、余白、配色、文章の分量まで、一冊の中で統一感を保ちながら、読者に「こんな世界が好きだ」と感じさせる工夫が詰まっています。

なかでも興味深いのは、同じ「洋服を紹介する雑誌」であっても、誌面の雰囲気がまったく違うことです。高級ブランドの魅力を伝える雑誌もあれば、日常の着こなしを親しみやすく紹介する雑誌もあります。これはWebデザインでも同じです。大切なのは、ただ格好よく作ることではなく、「誰に、何を、どのように伝えるか」を考えることだと思います。

ファッション誌からWebデザインに学べること

写真と文字の「主役」を決める

ファッション誌では、一枚の写真を大胆に使うページもあれば、小さな写真と説明文を数多く並べるページもあります。前者は印象や憧れを伝えるのが得意で、後者は商品を比較したり、具体的な情報を届けたりするのに向いています。Webサイトでも、最初に見せたいのが企業の世界観なのか、サービスの内容なのかで、適切な構成は変わります。

余白、書体、色が「その媒体らしさ」をつくる

余白を広く取り、大きな写真と少ない文字で見せる。逆に、複数の写真や小見出しをテンポよく配置する。どちらが優れているということではありません。読み手が期待する雰囲気に合っているかが重要です。文字の太さ、見出しの大きさ、写真の色味がそろうと、ひとつのブランドとしての印象が生まれます。

読者を具体的に想像している

雑誌は、読者の年齢だけでなく、仕事、休日の過ごし方、価値観、欲しい情報まで想像して編集されています。同じ30代でも、仕事着を探している人と、子育てをしながら普段着を工夫したい人とでは、読みたい内容が違います。Webサイトも「30~50代向け」と年齢だけで決めず、訪問者の目的や悩みから考えるべきでしょう。

ファッション誌のカテゴリーと、それぞれのデザインの特徴

ここからは、代表的なファッション誌を編集の方向性や雰囲気で分けてみます。実際には複数のジャンルにまたがる雑誌もあり、読者の年齢層も固定されたものではありません。あくまでWebデザインを考えるための分類です。誌面と公式サイトでは表現が異なるため、可能なら両方を見比べてみると発見があります。

1.モード・ラグジュアリー系──「憧れ」を視覚化する

モード系の雑誌では、服を単なる商品として並べるだけでなく、写真やスタイリングを通じて文化や時代の空気まで伝えようとします。ファッション写真の存在感が強く、構図、余白、タイポグラフィを使って独自の世界観をつくるのが特徴です。一方、ラグジュアリー系では、素材の質感、上品さ、落ち着き、特別感などが重視されます。同じ高級志向でも、前衛的な表現とエレガントな表現では印象が大きく変わります。

代表誌として、VOGUE JAPAN(コンデナスト・ジャパン)、ELLE・Harper’s BAZAAR・25ans(ハースト婦人画報社)があります。特にVOGUEはファッションを文化として捉える視点、25ansは華やかでエレガントなライフスタイルの見せ方が参考になります。

Webデザインへのヒント: ホテル、宝飾品、建築、上質なサービスなど、写真と余白を使って価値を感じさせたいサイトに向いています。ただし、写真だけで説明を省略すると、初めて訪れた人には何の会社か伝わらないこともあります。

2.ティーン・ヤングトレンド系──「自分ごと」に感じてもらう

若い世代に向けた雑誌では、流行の服だけでなく、メイク、学校生活、エンタメ、身近な悩みなどを横断して扱います。写真の点数や見出しの数が多く、親しみやすい言葉でテンポよく読ませる構成が特徴です。華やかな誌面でも、読者にとって必要な情報を見つけやすくする編集が求められます。

代表誌は、大学生世代に向けたnon-no、高校生世代のSeventeen(ともに集英社)、トレンド感の強いViVi(講談社)などです。Seventeenは現在、紙の雑誌とデジタル媒体を組み合わせて展開しています。

Webデザインへのヒント: 学生向けサービスやイベント、若い人を対象にした店舗のサイトでは、写真、短い見出し、明快な導線が参考になります。ただし装飾や情報を増やすだけでは見づらくなるため、優先順位が欠かせません。

3.フェミニン・大人かわいい系──親しみやすさと華やかさ

やわらかな配色、表情豊かな人物写真、心が弾むような見出しなどを使って、親近感と高揚感を表現するジャンルです。「かわいい」と一口に言っても、上品で清潔感のあるものから、遊び心の強いものまで幅があります。色だけで印象を決めるのではなく、写真と文字の組み合わせに注目すると面白いでしょう。

代表誌は、CanCam(小学館)やsweet(宝島社)。CanCamはファッションから日常の話題まで親しみやすく、sweetは「大人かわいい」という世界観を誌面全体で表現しています。

Webデザインへのヒント: 美容サロン、ブライダル、雑貨、女性向けサービスなどでは、色の選び方だけでなく、写真のトーンや言葉づかいを統一することが役立ちます。

4.オフィス・きれいめ系──実用性と洗練を両立する

働く人の服装を扱う雑誌では、見た目の美しさに加えて、「明日、何を着るか」という現実的な疑問に答える必要があります。アイテムをきれいに見せる写真、使い回しの例、場面別の提案など、情報を整理して伝える編集が得意です。派手さよりも、落ち着き、信頼感、読みやすさを重視する表現が目立ちます。

代表誌は、Oggi(小学館)、BAILA(集英社)、CLASSY.(光文社)など。同じきれいめでも、仕事に寄せるのか、休日の着こなしやライフスタイルまで広げるのかで見せ方が異なります。

Webデザインへのヒント: 士業、コンサルティング、医療関連、法人向けサービスなどでは、品のあるデザインと必要な情報の探しやすさを両立する際の参考になります。

5.暮らし・ライフスタイル系──生活場面が見えるデザイン

ファッションとともに、住まい、料理、子育て、仕事、家族との時間などを扱う雑誌です。商品そのものの写真だけでなく、「その商品を使う暮らし」が伝わる写真や、読者の実感を紹介する記事が多く見られます。過度に飾り立てず、安心して読み進められる誌面づくりが特徴です。

代表誌は、LEE(集英社)、VERY・STORY(光文社)。それぞれ読者の生活環境や関心に違いがあり、その違いが特集の切り口にも表れています。

Webデザインへのヒント: 住宅、不動産、教育、生活関連サービスでは、設備や商品の写真だけでなく、利用する人の暮らしまで想像できる写真と文章が効果的です。

6.ナチュラル・カルチャー系──流行よりも「好き」を伝える

流行を追いかけるだけでなく、服の選び方や暮らし方に一貫した美意識を持つジャンルです。何気ない街角の写真、自然な着こなし、少し遊びのある文字組みなどによって、読者が共感できる空気感をつくります。きれいに整えすぎないことも、意図を持って選ばれた表現のひとつです。

代表例はFUDGEとmen’s FUDGE(ともに三栄)。パリやロンドンの街に見られる装い、定番アイテムの着こなしなど、日常に根ざした独自のスタイルを大切にしています。

Webデザインへのヒント: カフェ、雑貨店、アパレル、地域の小さなブランドなどでは、作り込みすぎた宣伝写真よりも、店や作り手の雰囲気が伝わる写真が似合うことがあります。

7.美容専門誌──写真の魅力と説明の正確さ

美容専門誌では、色や質感を美しく表現する写真と、商品の特徴・使い方・比較などの実用情報が同居しています。読者が知りたいのは「きれいな写真」だけではなく、「自分に必要なのか、どう使うのか」という判断材料です。ビジュアルと情報をどの順序で並べるかが重要になります。

代表誌は、美的(小学館)、MAQUIA(集英社)、VOCE(講談社)。それぞれ美容のトレンドや専門情報を扱いながら、写真、ランキング、解説記事などを組み合わせています。

Webデザインへのヒント: 化粧品、美容室、エステサロンなどのサイトでは、印象的な写真と、料金・施術内容・注意点の分かりやすい説明を両立させることが大切です。

8.メンズ・シティカジュアル系──カルチャーと個性を伝える

男性誌にも多様な方向性があります。カジュアル系では、服と一緒に音楽、映画、旅行、街、インテリアなどを取り上げ、ライフスタイル全体を提案します。誌面の自由なレイアウトや見出しの表情、読み物としての企画力は、女性誌とはまた違った参考になります。

代表誌は、シティボーイのカルチャーを扱うPOPEYE(マガジンハウス)、若い世代の装いを提案するMEN’S NON-NO、大人のカジュアルを扱うUOMO(ともに集英社)などです。

Webデザインへのヒント: 趣味性の高い店、飲食店、スポーツ・アウトドア関連のサイトでは、商品情報だけでは表せない文化や店主の個性を伝えるヒントになります。

9.メンズ・ラグジュアリー/大人のライフスタイル系──落ち着きと存在感

大人向けの男性誌では、ジャケットや時計、車、旅行、食事などを通して、装いと暮らしの楽しみ方を提案します。力強い見出し、存在感のある人物写真、質感が伝わる商品撮影などが特徴です。ただし高級志向でも、華やかさを前面に出す媒体と、知的で静かな表現を選ぶ媒体では方向性が異なります。

代表誌として、LEON(主婦と生活社)、GQ JAPAN(コンデナスト・ジャパン)、Safari(日之出出版)などがあります。LEONの遊び心、GQのファッションとカルチャーの横断、Safariの西海岸的なライフスタイルは、それぞれ異なる魅力です。

Webデザインへのヒント: 車、時計、高価格帯の商品、経営者向けサービスなどでは、どんな大人に魅力を感じてほしいかを具体的に考えるきっかけになります。

紙の雑誌からデジタルへ──ファッションメディアの変化

ファッション誌を調べる際は、雑誌名だけでなく、現在どのような形で情報を発信しているかも確認したいところです。例えば『MORE』は2025年9月発売号で紙版の刊行をいったん休止しました。また『JJ』は2020年12月発売号で月刊発行を終え、現在はWebやイベントなどを中心に展開しています。知名度のある雑誌が、以前と同じ発行形態で続いているとは限らないのです。

一方で、紙の雑誌が培った写真や文章の編集力は、公式WebサイトやSNSにも受け継がれています。誌面の表紙とWebサイトのトップページを見比べると、同じブランドの世界観を、異なる画面や読み方に合わせて表現していることがわかります。Webデザインの参考にするなら、この「見せ方の翻訳」に注目するのも面白いと思います。

同じ商品でも、どの雑誌で紹介するかによって見え方は変わる

例えば、ひとつの革製バッグを紹介するとします。モード系なら、印象的な写真と短いコピーで造形の美しさを見せるかもしれません。仕事着を扱う雑誌なら、収納力や仕事中の使いやすさを丁寧に説明するでしょう。ライフスタイル系なら、通勤や買い物といった場面の中にバッグを登場させるかもしれません。

バッグ自体は同じでも、伝えたい魅力が違えば、写真の撮り方、見出し、本文、ページ構成まで変わるわけです。これはホームページ制作にもそのまま当てはまります。「おしゃれなデザイン」を選ぶ前に、訪問者がそのサイトで何を確かめたいのか、どんな気持ちになってほしいのかを考える必要があります。

ファッション誌をWebデザインの参考にするときの見方

雑誌を参考にするなら、表紙の印象だけで判断せず、特集の最初の見開きから本文、商品紹介ページまで眺めてみるのがおすすめです。大きな写真の直後に説明を入れているのか、小見出しで区切っているのか、ページをめくるごとに緩急をどうつけているのか。こうした編集の流れは、Webサイトのトップページから下層ページへ情報を整理するときにも役立ちます。

さらに、同じ雑誌の公式Webサイトも見比べてみてください。紙では左右の見開きとページをめくる順番が使えますが、Webではスマートフォンの縦スクロール、リンク、メニュー、検索などに合わせて再構成する必要があります。雑誌の表現をそのまま画面に移すのではなく、「何を主役にするか」「どういう順番で伝えるか」という編集の考え方を取り入れることが大切です。

もちろん、写真や誌面デザインをそのまま複製して使うのは避けるべきです。あくまで構成や発想の参考として研究し、実際のWebサイトでは企業や店舗自身の写真、文章、強みを使って表現します。

まとめ|デザインの違いは、伝えたい相手の違いでもある

ファッション誌を見比べていると、同じファッションというテーマでも、雑誌によって写真も言葉も紙面の空気も違うことに気づきます。それはデザイナーの好みだけで決まっているのではなく、届けたい読者と、読者に提供したい価値が違うからです。

ホームページも同じだと思います。流行のデザインを取り入れることより、企業の特徴を理解し、訪問者に必要な情報を、ふさわしい雰囲気で伝えること。そのためのヒントは、ファッション誌の一冊一冊に詰まっています。

掲載誌の出版社・発行元

本文で紹介した雑誌の出版社・発行元の公式サイトも参考になります。コンデナスト・ジャパン、ハースト婦人画報社、集英社、小学館、光文社、講談社、三栄、宝島社、マガジンハウス、主婦と生活社、日之出出版などです。刊行形態や最新号の情報は各社・各誌の公式案内でご確認ください。