
「ホームページはきれいにできているのに、何をしている会社なのか分かりにくい」。そんなサイトを見かけることがあります。写真も色も悪くないのに、サービスの内容や料金、問い合わせ先を探すのに時間がかかる。これは見た目の好みというより、情報の見せ方に原因があるのかもしれません。
ホームページのデザインには、写真や配色を美しく整えるだけでなく、訪れた人が内容を理解し、必要な情報へ迷わず進めるようにする役割があります。特に中小企業のホームページでは、初めて会社を知った人に「どんな仕事を頼めるのか」「信頼して相談できそうか」を短い時間で判断してもらうことが大切です。
今回は、ホームページ制作で意識しておきたい考え方を7つに整理しました。これが世界共通で定められた唯一の「七原則」というわけではありませんが、サイトを新しく作るときにも、既存のサイトを見直すときにも役立つ基本的な視点です。
1.情報を整理する──まず「探しやすさ」をつくる
最初に考えたいのは、何をどこに掲載するかという情報の整理です。例えば、会社紹介のページに事業内容、料金、採用情報まで詰め込むと、ひとつひとつの情報を見つけるのが難しくなります。反対に、細かくページを分けすぎると、今度はどこを開けばよいか分からなくなります。
ここで大切なのは、会社側の組織や業務区分だけでメニューを決めないことです。初めて訪れた人が知りたいのは、たいてい「どんなサービスがあるか」「費用はどのくらいか」「どんな実績があるか」「どう相談するか」といったこと。業種やサイトの目的にもよりますが、訪問者の疑問に沿って情報をまとめた方が、理解しやすい構成になります。
見直すポイント: メニューの名前だけを読んで、初めて訪れた人が各ページの内容を予想できるでしょうか。「事業案内」や「サービス」などの表現も、実際の掲載内容に合わせて使い分けたいところです。
2.優先順位をつける──大事なことから見せる
ホームページに載せたい情報は、どの会社にもたくさんあります。しかし、すべてを同じ大きさ、同じ強さで見せると、かえって何も目立たなくなります。そこで必要になるのが、情報に優先順位をつけ、見出しの大きさ、写真の扱い、配置などで違いをつくることです。
例えば、地域の外壁塗装会社なら、トップページの最初に伝えたいのは抽象的な企業理念だけではないはずです。「どの地域で」「どんな工事に対応しているのか」が分かり、その次に施工事例や対応内容、会社の情報へ進める構成が考えられます。企業理念が不要ということではなく、訪問者が知りたい順番を考えることが重要なのです。
見直すポイント: トップページを開いて数秒眺めただけで、誰に何を提供している会社なのか伝わるでしょうか。目立たせる箇所を増やすより、最初に見てほしい情報を絞る方が効果的な場合があります。
3.余白とまとまりを考える──近い情報は近くに、違う情報は離す
余白は、単にページをすっきり見せるための空間ではありません。関係のある情報をひとつのまとまりとして見せ、別の話題との区切りをつくる役割があります。見出しとその本文は近づけ、次の話題との間には少し広めの余白を取る。これだけでも、ページの読みやすさは変わります。
例えば、写真の下に説明文があるとき、写真と説明文が離れすぎていると、その文章が何を説明しているのか分かりにくくなります。一方、すべての要素を詰め込めば窮屈です。必要なのは余白を一律に広くすることではなく、情報の関係に合わせて間隔に差をつけること。読みやすいページには、こうした目に見えにくい工夫が重ねられています。
見直すポイント: 見出しと本文、写真と説明、ボタンと案内文は、それぞれひとまとまりに見えるでしょうか。余白の幅に理由があるかを意識してみると、改善点が見えてきます。
4.位置を揃える──目に見えない線で整える
見出し、本文、写真、ボタンなどの位置が少しずつずれていると、ページは落ち着かない印象になります。反対に、左端や中央の基準を決めて要素を揃えると、内容が整理されて見え、視線も自然に移動しやすくなります。
もちろん、すべてを左揃えにする必要はありません。タイトルを中央に置き、本文を左揃えにするデザインもあります。ただし、同じ役割の要素がページごとに違う位置にあったり、似たカードの高さや幅がばらばらだったりすると、意図しない雑然さにつながります。整列は地味な原則ですが、サイト全体の完成度を左右する部分です。
見直すポイント: 同じ種類の見出しやボタンは、同じ基準で並んでいるでしょうか。特にパソコン画面で複数の項目を横並びにしたときは、端や間隔が揃っているかを確認したいところです。
5.表現を統一する──繰り返しが安心感につながる
同じ役割のものには、同じ見た目と使い方を与える。これもホームページでは大切です。あるページでは青いボタンが「詳しく見る」、別のページでは同じ青いボタンが「申し込む」を意味していると、訪問者は判断に迷います。見出しの装飾や文字の太さ、リンクの表現にも一貫性が必要です。
デザインを統一すると、単に見栄えが整うだけでなく、サイトの使い方を覚えやすくなります。一度「この形は詳細ページへのリンクだ」と理解すれば、別のページでも同じように操作できます。国際的なWebアクセシビリティの指針でも、ナビゲーションや操作要素の一貫性が重視されています。
見直すポイント: 同じ働きをする部品は、同じ形で表示されているでしょうか。新しいページを追加するたびに独自のデザインを増やすより、共通のルールに沿って作る方が使いやすく、更新もしやすくなります。
6.文字と背景のコントラストを確保する──読めることを優先する
淡い色の背景に薄いグレーの文字を重ねると、上品に見えることがあります。しかし、文字が読みにくければ、どれほど雰囲気がよくても情報は伝わりません。文字と背景には十分な明るさの差が必要です。写真の上に文字を載せる場合も、写真の明暗によって読みにくくならないか確認しなければなりません。
また、文字の読みやすさは色だけで決まりません。小さすぎる文字、細すぎる書体、長すぎる一行、極端に詰まった行間なども負担になります。特にスマートフォンでは、パソコンで見たときとは印象が変わるため、実際の画面で読めるかを確かめたいところです。色だけで「必須」「エラー」などを伝えず、言葉や記号も添える配慮も重要です。
見直すポイント: 本文を無理なく読み続けられるでしょうか。明るい屋外でスマートフォンを使う場面や、年齢による見え方の違いも想像してみると、デザインの判断が変わります。
7.配色を決める──会社らしさと分かりやすさを両立する
色は、企業や店舗の印象を伝える大切な要素です。ただし、好きな色をいくつも使うだけでは、まとまりがなくなることがあります。まず背景や本文に使う基本の色を考え、そのうえで会社らしさを伝える色、必要な箇所に目を向けてもらう色を整理すると、統一感を出しやすくなります。
例えば、落ち着いた印象を出したい会社と、親しみやすさを大切にする店舗とでは、適切な色の使い方は違うでしょう。それでも「青なら必ず信頼感が出る」「赤なら必ず購買意欲が高まる」と決めつけることはできません。業種、写真、書体、文章の雰囲気などと組み合わせ、実際にどんな印象になるかを判断することが大切です。
見直すポイント: 色に役割があるでしょうか。特に目立たせたい部分だけで色を使い、それ以外を落ち着かせると、かえって重要な情報が伝わりやすくなることがあります。
7つの原則を使うと、ホームページはどう変わるのか
ここで、架空の住宅リフォーム会社のホームページを例に考えてみます。トップページに大きな写真があり、その下に代表あいさつ、新着情報、長い事業紹介文が続くサイトを想像してください。会社のことは書いてあるのに、訪問者が知りたい「どんなリフォームができるのか」「費用の目安はあるのか」「工事の実例を見られるのか」が見つけにくい状態です。
こうした場合、最初から写真や色を作り直す必要があるとは限りません。まず、対応する工事と地域を分かりやすく示し、施工事例、サービス内容、費用の考え方、工事の流れ、会社情報、問い合わせ方法の順に情報を整理してみます。そのうえで、見出しや写真の大きさに強弱をつけ、関連する情報をひとまとまりにし、ボタンや見出しのデザインを揃えます。既存の写真を生かしながらでも、サイトの伝わり方を改善できる可能性があります。
大切なのは「何を目立たせるか」を、制作する側の好みだけで決めないことです。訪問者が何を確かめ、何に不安を感じ、次にどんな行動を取りたいのか。その順序を考えてからデザインを整えると、写真や色にも役割が生まれます。
パソコンで整っていても、スマートフォンで使いやすいとは限らない
ここまでの7つの考え方は、画面の大きさが変わっても基本的には同じです。ただし、パソコンでは横に並んでいた情報が、スマートフォンでは縦に並びます。画面上部に表示できる範囲が狭くなるので、何を先に見せるかは一層重要になります。小さな文字をただ縮小して表示するのではなく、文章の長さや写真の配置、ボタンの押しやすさも見直す必要があります。
また、整ったデザインでも、問い合わせフォームが入力しにくかったり、リンク先が分かりにくかったりすれば、使いやすいとはいえません。Webデザインは、完成した一枚の画像ではなく、読んだり、探したり、操作したりする一連の体験を考える仕事でもあるのです。
まとめ──「きれい」より先に「伝わる」を考える
ホームページのデザインを見直すとき、つい色や写真、動きのある演出から考えたくなります。しかし、訪問者にとって大切なのは、求めている情報を見つけられること、内容を理解できること、安心して次の行動に進めることです。今回の7つの原則は、その土台を整えるためのものといえます。
同じ業種の会社でも、顧客層や得意分野、伝えたい強みによって、適切なホームページの見せ方は変わります。決まったデザインを当てはめるのではなく、会社の特徴と訪問者の目線を結びつけて考える。それが、長く使えるホームページをつくるうえで大切だと思います。
関連記事:ファッション誌に学ぶWebデザインでは、媒体ごとの読者層や世界観によってデザインの表現がどう変わるかを紹介しています。また、ホームページの新規制作やリニューアルについては、エヌエー・システムズのサービス案内もご覧ください。
参考情報
- W3C Web Accessibility Initiative「ウェブ・アクセシビリティのためのデザイン」
- W3C Web Accessibility Initiative「Use a Consistent Visual Design」

